有意義な産休を過ごす ~読書が好きみたいです~

34週となり、産休に入った私の日々の生活と拙い読書感想文です。

「フィンランド人が教える ほんとうのシンプル」 モニカ・ルーッコネン ダイヤモンド社 


f:id:hm0609:20191010173754j:image
誰も読んでいないと思って、ついつい慌ただしい毎日に置き去りになっていたこのブログ。

妊娠34週を迎え、産前休暇に入ったこともあり、復活。

前回の記事を書いたのが、ちょうどゴールデンウィーク中で、それ以降は本当に読書らしき読書はしていない。

読んだのは、妊娠・育児に関する雑誌や本ばかり。

子供の夜泣きへの対応を書いた安眠の本だったり、ベビーサインの本だったり。

育児に対して、未知数なので、とにかく知識を得たい。学習からの実践。

あと、家事なんて適当でいいという本も読んだ。週4日、豚汁でもいいという内容に衝撃を覚えた。実際にそれだと自分が食事に飽きるから無理だけど、栄養素を摂取する&自分が疲弊しないという目的では考え方が合理的だなと思ったし、気が楽になった。

 

そんなこんなで34週となり、仕事をお休みして、日中は一人で過ごす日々となった。

todoリストを作って、部屋の掃除、料理の作りおき、いらない粗大ごみの処分、美容院へ行く、たまっていた書類関係の整理等々をこなして、早や4日目。

次はあれがしたい、これがしたいと思う気持ちに対して、大きなお腹で動きにくく、動悸・息切れする体。

結局、家で過ごすことが増えて、ようやく読書熱も復活!!

早速、図書館にて本を数冊借りてきた。

 

そんな私が、読んでよかったと思うのが、まずこの本。

 

フィンランド人が教える ほんとうのシンプル」

 

日本人の多くが、「かもめ食堂」を見て、フィンランドという国に憧れ、好きになったのではないかと思う。

ご多分に漏れず、私もそうだ。

マリメッコムーミン。北欧家具。

全部大好きで、商品を見れば欲しいものばかり。

フィンランドという国には、底知れない魅力がある。

「LIFE!」という映画で、主人公がスケートボードで滑っていたのも北欧ではなかったかな。景色も素晴らしい。

また、北欧といえば、図書館が有名というのも、以前何かの番組だかで(世界ふしぎ発見!の可能性大)見たし、北欧展というイベントを見に行った時にも知った。

そんな憧れの国、フィンランド

 

憧れすぎて、フィンランドについては色々調べたことがある。

まず世界幸福度ランキングで2019年に1位。(日本は58位)

その理由として、フィンランドは教育や子育て支援に力を入れており、母親の就労有無にかかわらず保育所が使えたり、「ネウボラ」という制度では妊娠中から子供が6歳になるまで同じ保健師等の専門家が母親と家族をサポートしているなど充実した制度がある。また、母親が子供を預けて外出するための育児支援もあり、その日は気兼ねなく母親は美容院やスパに行ったりできるそうだ。

さらに男性の育児休業取得率も8割と高い。

仕事は8時~4時までと決まっていて、仕事が終わったら5時には子供を迎えに行って自宅でゆっくりと家族で過ごすらしい。

夏の休暇は4週間、冬の休暇は1週間ある。生活>仕事の優先順位である。

 

妊娠中の私が一番心惹かれたのが、フィニッシュベイビーボックスの存在。

フィンランドでは出産準備パッケージとして、妊娠したら国からこのボックスが送られる。ボックスは大きい段ボールで、中には部屋着・外出着・寝具・ベビー用品が一式入っていてまた、この段ボール自体がベビーベッドになるという優れもの。

赤ちゃんと添い寝していて亡くなる事故を防ぐためという目的が、この段ボールにはある。

また、中身は出産後1年にわたって必要な衣類等がそろっている。寒いフィンランドでも、しっかり過ごせるよう防寒着も入っている!!

金銭的に余裕があろうがなかろうが、必ず渡されるというのが、手厚い社会保障フィンランドならでは。

日本でも同様のボックスを頼めるということで、ついつい注文してしまった。

値段はまあまあするが、1年間使用できる上、他ではみない北欧デザインの服はとても可愛くて、今から赤ちゃんに着てもらうのが非常に楽しみである。

 

話が異常なほど脱線した。

本の感想である。

まず、この本はデザインが素晴らしい。図書館で見つけた時に、なんてコンパクトでおしゃれな本だろうかと思った。

また、字が大きく、一つのテーマに対して大体が見開き2ページで内容が簡潔にまとまっている。開いたページを好き勝手に読める。

北欧の写真も何枚か見開きで大きく掲載されている。

 

フィンランドの人は、決してミニマリストではない。

ただ、いいと思ったものはずっと使うし、無駄に買わない。そして、自分に今必要ないと思うものは、どんどん他の人に譲る。

また、生活をとても大切にしている。特に、ゆったりと時間を過ごすことに重きをおいている。美しい景色を眺める時間を持つのは、心に余裕がないとできない。

ゆっくり読書を楽しみ、コーヒーを飲み、サマーコテージで過ごす4週間はキャンドルの揺らめきや風の音にも耳を澄ませる。建築物をみたり、図書館で過ごすなどお金をかけずに過ごすのも上手だ。

日々心を豊かにして、しあわせを感じる人生というのは、できそうで中々できない。

実際、私も産休に入ってから、なんだかあせっていた。

しかし今日は、部屋でコーヒーを飲み、甘いお菓子を食べて、ジャズを聴きながら本を読むという時間を過ごし、素晴らしい幸福感を得ることができた。

夕方、外を散歩すると、稲穂が黄金色になってさわさわと揺れていて秋を感じた。

いつもは車で通り過ぎる道も、歩いてみれば色々な発見があることを知った。

何もしない、というのも贅沢な時間の過ごし方だ。

産休に入ってすぐ、この本を図書館で見つけられてよかった。

私もこの産休中に「人生で本当に大切にしたいこと」をゆっくり見つけていきたい。

あと、フィンランドつながりで「365日のシンプルライフ」という映画も見ようと思う。

「木かげの家の小人たち」 いぬいとみこ作 吉井忠画 福音館書店

f:id:hm0609:20190429224239j:plain

マルク・シャガールの絵


小さい頃「だれも知らない小さな国」(佐藤さとる著)が大好きだった。

繰り返し繰り返し、何度も読んだ。

挿絵もシンプルだけど可愛かったなぁ。

コロボックルが生き生きと生活する場所に行ってみたいと思ったし、実際に私が気づかないだけですぐそばに小人は近くにいるんだと思っていた。

想像しただけでわくわくする。

借りぐらしのアリエッティー」「こびとづかん」「スマーフ」など、色々な物語に小人は出てくるけど、やっぱりコロボックルが一番愛おしい。

 

この「木かげの家の小人たち」は、図書館のリサイクルコーナーで見つけた。

図書館の本の整理にあたって、古い本を何冊でも持ち帰ってよいですよというのが定期的にある。

この本は、1967年に発行された古い本なので、もう処分されることになったらしい。

私は、このリサイクルコーナーが好きだ。私の地域には古本屋がないので、こういった昔の本との出会いはそうそうない。

この本は、そんな中で小人の話だったので、家に持って帰ることにした。

 

イギリス人の女性の先生(ミス・マクラクラン)から、教え子の少年(森山達夫)は小人のバルボーとファーンを預かる。小人たちのために、少年は2階の書庫、本棚の一番上と天窓の間の三角のすきまに小人たちが生活できる場所を作る。

毎日、コップ一杯の牛乳を運んであげることで、小人たちはその牛乳で生きていくことができる。

その後、少年は青年となり、結婚し、3人の子供に恵まれる。小人に牛乳を運ぶ仕事は、妻(透子)、長男(哲)、次男(信)、長女(ゆり)へと引き継がれる。

バルボーとファーンの間には、ロビンとアイリスという二人の子供が生まれる。

そうやって平和に暮らしていて森山家だったが、

戦争の始まりによって、

森山達夫は自由主義者という思想性から捕まえられ、

信は家族に反発し、愛国心をもった兵隊になるため学校に通う

ゆりは縁故疎開をした先でも小人たちの世話を続けるが、

段々牛乳が手に入らなくなり、ゆり自身も体調を悪くしていく。

小人たちは自分たちでどうにか生きていくために、工夫しながら生活を続ける。

 

本の中に、小人のバルボーとファーンが話す場面がある。

ーなぜ、わたしたちはこのままで、しずかに暮らすことができないの?

ファーンはバルボーにたずねました。

ーなぜって、そんなことは「人間」にきいてみなさい!

バルボーは腹をたてていいました。

ーわたしにわかっているのはこれだけだ!やさしかった信の心をあのように変えたもの、信を「愛国者」に変えたもの、それの目に見えない大きな力がわたしたちの平和な暮らしをうばってゆくのだ、わたしたちや下の森山家を暗い谷底へひきずりこんでゆくのだ・・・

 

 

やがて戦争が終わるけれど、森山家は空襲で燃えて前の場所はもうない。

小人たちはどのような決断をしたのか・・・

という内容で、戦争によって森山家の生活が一変し、小人たちもそれに翻弄され、

それでも二つの家族が懸命に生きている姿が、とても印象的な物語だった。

 

作者のいぬいとみこさんは、少女時代に戦争を経験している。

怖かっただろう、辛かっただろう実際の体験が物語に描かれている。

戦争中に自分が敵国の妖精を愛し続けていたこと、それを後ろめたく思っていたこと、そういった気持ちもこの物語にこめたそうである。

確かに物語の中には、兄の信から「敵国の小人に、牛乳を与え続けようとするなんて非国民だ」と言われてゆりが思い悩む場面がある。

ゆりに母の透子夫人は、こう伝える。

ー信もゆりも知らないでしょうけど、おおぜいの人がみんなでまちがいをするってこともあることなのよ。「お国のために」というりっぱな言い方で、「えらい」ひとたちがみんなでまちがったことをするってことがね・・・わたしだって、おとうさまのことがなければ、信のように「お国」を美しく考えていられたかもしれない、けれどもひとりの自由な人間を危険だといってとじこめておくようなお国が、どんなにまちがっているか、はじめてわたしは知ったのよ・・・・・

平和になり、このような作品をいぬいさんが発表できる時代になったことを本当にうれしく思うし、今なお戦争が起きることがなく、自由にこの本が読めていることもうれしく思う。

情報統制というのは本当に怖い。思想性を咎められるなんて絶対に嫌だ。

けれど、おおぜいの人がみんなでまちがいをする、「えらい」ひとたちがみんなでまちがったことをするっていうことが、今後もあるかもしれない。 

それを間違っていると、国民が止められる国であってほしいと思う。

いぬいさんは、女学校卒業後、保母さんをしていた経験もある。児童文学にすることで、より多くの子供たちに思いを伝えたかったのではないだろうか。

 

初めは、小人の出てくる本だぁ~と思って読み始めたけれど、平成が令和に変わっていく今、戦争と平和について今一度考えることができて、この本と巡りあえて本当によかったと感じた。

 

最後に、この本は書き出しの言葉からして、とても美しかった。

 

人はそれぞれこの地上のどこかに「だれもゆけない土地」を持っています。その人自身のいちばんたいせつな、愛するものの住んでいる「ふしぎな土地」を。

ある人はサハラ砂漠の真ん中の、砂と砂とが作り出した小さな谷あいに、「だれもゆけない土地」をもっていました。そこは、その人と星からやってきた小さい王子さまと、バラの花と一ぴきのキツネのほか、けっしてだれもゆくことのできない「ふしぎな土地」でした。・・・・つづく

 

「だれにもゆけない土地」「ふしぎな土地」は、おばあちゃんになっても、ずっと持ち続けていたい。

「FACT FULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越えデータを基に世界を正しく見る習慣」ハンス・ロスリング著 日経BP社

f:id:hm0609:20190427225414j:plain

ドバイの風景


目に見えるものが真実とは限らない。

辺野古移設は誰が望んでいるのか。

本当に憲法改正は必要なのか。

北朝鮮は日本を攻撃できるのか。

コンフィデンスマンの世界にようこそ。

 

コンフィデンスマンJPが好きだ。なので真似してみた。難しい。

最近ようやくFODで一気に全部視聴。

愉快、痛快、爽快、大がかりなセットで手間暇かかっていて、本当に面白かった。

5月17日から映画が公開されるらしい。観に行きたいなぁ。

 

 

前置きが長くなった。

「FACTFULNESS(以下:ファクトフルネス)」

それを説明するために、

まず13のクイズに答えることから、この本は始まる。

私はこれまで、公衆衛生について学習してきたつもりだし、今もなお仕事で学んでいる部分も多い。

無論それは日本だけの情報かもしれないが、世界に通じる部分だってある。

それに、世界のニュースはテレビ・ネットですぐ手に入る時代となった。

だからこのクイズには正解する自信があった。

だが・・・・

正解したのは質問8だけだった・・・。

正解率は7%。

しかし、大体の人が1問だけ正解している私と同じレベルの認識らしい。

これは学者でも同じ。

なぜこんな結果になったのか。

 

その原因が、10の思い込み(本能)である。

①分断本能・・・一番上と、一番下を比べる。

②ネガティブ本能・・・悪いニュースばかり報道される。

③直線本能・・・どんどん悪くなる、どんどん増えると思う。

④恐怖本能・・・怖い情報は目に止まる。

⑤過大視本能・・・ひとつだけの情報ですべてを決めつける。

⑥パターン化本能・・・すぐ同じグループにまとめてしまう。

⑦宿命本能・・・価値観は変わらないと思っている。

⑧単純化本能・・・一つの見方しかしない。

⑨犯人捜し本能・・・すぐに犯人を捜す。

⑩焦り本能・・・焦ってすぐ対策しようとする。

本自体は分厚いし、パラパラめくるとグラフも載っていて小難しい内容かと思っていたが、実際はハンス・ロスリングさんが、実際に自分が思い込みで失敗した経験談などがかかれていて、非常にわかりやすかった。

 

自分がどれだけ知識不足で、情報をアップデートできていなかったか、そして偏った情報だけに振り回されて偏った見方をしていたか気づくことができた。

事実に基づいて世界を正しく認識する。

事実に基づかない真実をうのみにしないために、情報だけでなく自分自身を批判的に見る力も持つ。

そして本能に支配された人を許すことも大切。

この考え方は実生活でも十分活かせると思う。

例えば、今年は100人中80人が合格、20人が不合格という情報、

合格率80%と聞くと合格率が高く感じるし、

5人に1人が落ちたと聞くと、すごく難しい試験にも思える。

でも昨年は100人中95人が合格という情報を追加されると、

今年の試験は難しい問題だったとも感じるし、今年の受験者は勉強していない人が多かったとも感じられる。

しかし10年前から一昨年までは100人中50人が合格という情報が追加されると、

去年と今年は優秀な人が多かったと感じる。

情報によってどんどん自分の認識が変わっていく。でも、今年の合格データだけだったらこの認識にはたどり着かなかった。

それを知ったうえで、しっかりと自分で考え、正しい知識や情報を得ていかねばと思った。

 

 

本の中で、一番印象に残ったのは、第7章 宿命本能の部分。

ハンスさんが、アフリカはいずれ貧困を脱出してヨーロッパぐらいに発展するだろうという講演をしたとき、講演を聞いた人から「アフリカ人が、いずれヨーロッパのいい観光客になるというビジョンはないの?」と言われて、自分が相も変わらずヨーロッパにアフリカは追いつけないという上から目線の考え方にとらわれていたと気付いてはっとしたという話。

アジアだって見渡せば、すでに日本が遅れていること、追い抜かれている部分がたくさんある。それでも「日本はアジアのトップ」なんていう認識のままでいたら、だめ。

そんなことも思った。

それでも、日本だけにこだわらず、アジア全体で、地球全体で平和な世界になっているのならそれはとってもいいこと。

ファクトフルネスを実践して、世界を見れば、世界に希望が持てる。とかかれていたが、実際私もそう感じた。

いろんな情報を得て、いろんな考え方を知って、そのうえで思い込まず、謙虚に自分の考え方を見つけていきたいなぁ。

 

感想が長くなったけれど、さすが名著でした。

以上。

「そして、バトンは渡された」瀬尾まいこ 文藝春秋

f:id:hm0609:20190427225311j:plain

お気に入りのブローチ


本屋さんに行けば、必ず「○○賞受賞」「○○大賞」というキャッチコピーが目に飛び込んでくる。

私は、この言葉に弱い。

無類の読書好きは、自分の直感だけを頼りに、素敵な本に巡り合えるのだと思う。

しかし私は、図書館では運命をいつも求めているが、本屋さんではできるだけ失敗を避ける。そう、ケチで小心者である。

 

今回、この本を選んだ理由は二つある。

まずは、2019年本屋大賞を受賞。全国書店員が選んだ本なら間違いない。

そして、本の主人公が、親は何回も変わったけれど幸せに過ごしている話ということ。

大抵、お涙頂戴ものは、苦労がつきものだ。それがない。にもかかわらず、著者会心の感動作だと??どういうことだ???なんだ???と思って本を購入した。

 

まず、読んでみての感想。

すごく幸せな気持ちになった。

これは現代においては、あり得ないおとぎ話なのかもしれない。それでも、子供の人生は親が誰であっても幸せでいてほしいし、幸せな人生を歩んでほしいものだ。

私は両親以外の人にも支えられて、ここまできたということを思い出すこともできた。

家族や親族、友人や職場の人だけではない。

思い返せば、私の人生には、一人暮らしの時のアパートの管理人のおじさん、クリーニング屋のバイト先のパートのおばさん、コンビニの店長さんとその家族、同じアパートで過ごしおかずや野菜をおすそわけしあった看護師さんや学校の先生、いきつけの美容室のご夫婦、よく家にお邪魔してお話を聞いたりご飯をごちそうになったおばあさん。

たくさんのたくさんの出会った大勢の人に支えられて、今まで来た。

この本を読んだだけで、色々な優しさの思い出がよみがえり、心があたたかくなった。

 

それに、家族との懐かしい夕食の時間。

必ず集まれる時は皆で集まって食べた夕食。

友達とけんかしたこと、テストが難しかったこと、面白かった本やドラマの話、ニュースや政治のことまで。私達家族はおしゃべりが好きだから、めいめいに話したいことを話していた。そんな家族の時間を、風景を、思い出した。

その時食べたものは、ほとんど覚えてないけど、お母さんのそば米汁、茶碗蒸しは今でも大好物だし、寒い時期は受験勉強の時に作ってもらった鍋焼きうどんが食べたくなる。

この本の中にも、美味しそうなご飯の場面がたくさん出てくる。愛情あふれる、特別なご飯と家族の時間。

 

私はこれから子供を生む。母親になる。

その時、

「母親になってから明日が二つになった。」

「自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日がやってくるんだって。親になるって、未来が二倍以上になることだよって。明日が二つにできるなんて、すごいと思わない?」

親になった幸せを、こんな素敵な言葉で伝えられる母親になりたい。

「消滅世界」 村田沙耶香 河出書房新社

f:id:hm0609:20190420175946j:plain

村田さんの本は、「コンビニ人間」しか読んだことがない。
サイコパスの主人公が、普通の人間になり社会の歯車となっている感覚をコンビニのアルバイトで味わう描写が、本当にリアルで奇妙で、とても面白かった。
また、西加奈子さんと中村文則さんが、村田さんはとにかく誰よりも変わっていると何かの対談本で述べていて、ずっと気になっていた作家さんだった。

今回、ようやく図書館で1冊だけ、村田さんの本を見つけた。
図書館で本を選ぶ時は、大体作家さんの名前につられて借りるか、図書館に置かれた説明文をよんで新刊コーナーかおすすめコーナーから借りることが多い。
その方法で気になる本が見つけられなかった時は、本棚をア行から順にたどっていき、気になる本を手に取ってタイトルと表紙、本の書き出しで決める。

今回は、村田さんの本だ!と思ってすぐ借りたので、何も悩まなかったけれど、
「アダムとイヴの逆って、どう思う?」
この書き出しは、好きだった。
読み進めていくうちに、なんだか偶然とは言え、自分の境遇と微妙にリンクする内容だった。
これだから読書はたまらない。

家族制度も、子供を授かる方法も、今とはまったく違う世界。
恋をする相手は人間でなくても構わない。
夫と妻は、セックスをしない。
恋人は、外に作り、家族とは清潔な関係が望ましい。
子供は人工授精で授かる。
男性も人工子宮によって子供を授かることができる。
そして子供は自分が育てなくてもよい。
社会の中にたくさんの子供とたくさんのお母さんが存在する。

私は昨年結婚して、今年妊婦になった。
恋をして結婚して、そして妊娠した。
しかし、消滅世界の中では、それはずいぶん過去の世界なのである。

今だって、
漫画のキャラクターに恋をする人は多いし、
婚姻制度にこだわらない人も増えている。
人工授精は、不妊治療を続ける人にとって、子供を授かるための希望だ。
セックスレスの夫婦は多い。

子供を産んでも育てられず虐待して殺してしまう人も多い。
フィクションだけれど、近い将来、こういう世界が来るのかもしれない。
と、思わせてしまうのが、作家さんのすごい所だなぁと思う。


主人公が、消滅世界でどうなるのか。
とても読みごたえがあった。
恋愛とは何だ?結婚とは何だ?家族とは何だ?出産とは何だ?

「私は子宮で世界と繋がっているのだ。」
この言葉が、響いた。

読書ブログ開設

f:id:hm0609:20190420180242j:plain

スペインで見かけたおしゃれな本屋さん


この数か月、本当に毎日ぼやーっとしていた。

平日は仕事に行き、家に戻ったら何となくテレビを見て、何となく芸能人のブログやYoutubeを見て、そして何となく眠たくなったら寝て一日が終わっていた。

休日はいつもより遅い時間に起き、たまっている家事を少しずつ片付け、平日は見なかった録画していたドラマを見たり夫が収集した漫画を読みすすめて、やっぱり芸能人のブログや、さらにその芸能人のアンチブログや芸能スキャンダルのネット情報を読み漁ったりして、あっという間に土日が終わっていた。

「妊娠初期だから仕方ない」「気分がすぐれないのだから、無理をしちゃいけない」と思って、このぼやーっとした日々に勝手に意味づけをしていた。

見逃していたドラマも撮りだめていた映画も完全に見終わり、いよいよぼやーっとした毎日がさらにぼやけてきていたが、

一昨日、本屋さんに行き、久しぶりに新刊コーナーを見た時に、

自分の目に久しぶりに生気が宿った気がした。

いくつかの本をパラパラめくって、帯のメッセージや裏表紙のあらすじや、ポップの言葉を読んで、2冊の本を買った。

心がウキウキして、本を入れたビニール袋をぶんぶん振りながら家に帰った。

さらに昨日は、図書館に寄った。

図書館では、高校生が座って本を読んでいて、一緒のタイミングで入ってきた若い男性が新しく図書カードを作りながら図書館職員に本の借り方を熱心に尋ねていた。

図書館に、人生の折り返し地点には到達していない若輩者が複数名いることに図書館存続への安心感を勝手に覚えた。

今日久しぶりにきたこの図書館は、私が小学生の頃に2週間に1回は母と通った懐かしい図書館である。

新刊コーナーや図書館職員がおすすめしているコーナーを物色し、その後好きな作家の名前を本棚から探して読んでいない本を見つけて両手で抱えた。

3冊の本を借りて、家に帰った時には、すっかり私の心のぼやーっとした感覚はなくなっていた。

そうだ、私は読書が好きで、読書が趣味だったのだ。

ここ1年は、仕事やプライベートが慌ただしく、図書館の本を借りてもほぼ読まずに返却していた。

けれど、妊娠を機に、今までの行動を必要最小限にしたら、たくさんの時間が生まれた。

しかし、時間の使い方を、最近すっかり忘れてしまっていたようだ。

 

今日からたくさんの本を読む。このブログはその決意である。