有意義な産休を過ごす ~読書が好きみたいです~

34週となり、産休に入った私の日々の生活と拙い読書感想文です。

「消滅世界」 村田沙耶香 河出書房新社

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村田さんの本は、「コンビニ人間」しか読んだことがない。
サイコパスの主人公が、普通の人間になり社会の歯車となっている感覚をコンビニのアルバイトで味わう描写が、本当にリアルで奇妙で、とても面白かった。
また、西加奈子さんと中村文則さんが、村田さんはとにかく誰よりも変わっていると何かの対談本で述べていて、ずっと気になっていた作家さんだった。

今回、ようやく図書館で1冊だけ、村田さんの本を見つけた。
図書館で本を選ぶ時は、大体作家さんの名前につられて借りるか、図書館に置かれた説明文をよんで新刊コーナーかおすすめコーナーから借りることが多い。
その方法で気になる本が見つけられなかった時は、本棚をア行から順にたどっていき、気になる本を手に取ってタイトルと表紙、本の書き出しで決める。

今回は、村田さんの本だ!と思ってすぐ借りたので、何も悩まなかったけれど、
「アダムとイヴの逆って、どう思う?」
この書き出しは、好きだった。
読み進めていくうちに、なんだか偶然とは言え、自分の境遇と微妙にリンクする内容だった。
これだから読書はたまらない。

家族制度も、子供を授かる方法も、今とはまったく違う世界。
恋をする相手は人間でなくても構わない。
夫と妻は、セックスをしない。
恋人は、外に作り、家族とは清潔な関係が望ましい。
子供は人工授精で授かる。
男性も人工子宮によって子供を授かることができる。
そして子供は自分が育てなくてもよい。
社会の中にたくさんの子供とたくさんのお母さんが存在する。

私は昨年結婚して、今年妊婦になった。
恋をして結婚して、そして妊娠した。
しかし、消滅世界の中では、それはずいぶん過去の世界なのである。

今だって、
漫画のキャラクターに恋をする人は多いし、
婚姻制度にこだわらない人も増えている。
人工授精は、不妊治療を続ける人にとって、子供を授かるための希望だ。
セックスレスの夫婦は多い。

子供を産んでも育てられず虐待して殺してしまう人も多い。
フィクションだけれど、近い将来、こういう世界が来るのかもしれない。
と、思わせてしまうのが、作家さんのすごい所だなぁと思う。


主人公が、消滅世界でどうなるのか。
とても読みごたえがあった。
恋愛とは何だ?結婚とは何だ?家族とは何だ?出産とは何だ?

「私は子宮で世界と繋がっているのだ。」
この言葉が、響いた。